さおだけ屋で働いてみた
たけや~さおだけ~、でおなじみ?のさおだけ屋さん。
でも買うのはちょっと怪しい、まして働くなんてなおさら。
そんななか、私、少しだけ働いたことがあります。
かれこれ25年前になりますが、会社を辞め、失業保険も切れかけていた私は、アルバイト雑誌(当時はこれが必需品だった)でたまたま、さおだけ屋のバイトを見つけたのです。
何が魅力かっていえば、日当の日払いです。たしか研修期間の2週間は一日8000円、それが終われば12000円くらいでした。毎日が給料日です。
雑誌に載っていた電話番号に緊張しつつ電話してみると、意外にも普通に若い女の人が電話に出ました。アルバイトの申し込みであることを告げると、これまた、ごくごく普通に面接の案内をしてくれました。
面接当日、履歴書をざっと眺めた中年のおじさんに、「君はいけそうな気がする」と言われ、即日採用されました。なんでも「見た目が怪しいのはダメ」だそうで、幸い私はその点で合格だったようです。さっそく翌日から働くことになりました。
さおだけ屋の朝は早い。朝7時まえには営業所へいき、商売道具の軽トラに竿と物干し台を積みこむ。それが終わると住宅地へ向けて出発する。
8時になれば例のアナウンスを流す。その音量にもコツがあって、四方にうまく音が散る大きさが存在するのです。もう忘れてしまったけれど、車の速度にもマニュアルがありました。
最初の2日は研修期間で、ベテランのおじさんが運転する車に乗せてもらい、売るためのトークを学びます。
3日め、いよいよデビューです。
・・・1本も売れませんでした。
4日め、とある古い集合住宅で、その奇跡は起きたのです。たまたま通りがかった主婦の方に声をかけられ、なんと1本買ってもらえました! しかも2本で1000円の安いやつではなく、1本2500円くらいするステンレス製の竿です。
ちょっと長いって言っていたので、その場で切ってあげました。当たり前だけど、人生初です。
驚いたのはそのあと。わたしもわたしも、って何人も車の周りに人が集まってきて、バザーか?っていうくらい。
信じられます?
午後になって場所を変えても、通りすがりの母娘が勝ってくれたり、お店やってるおじさんが家にあげてくれてコーヒーご馳走になったり。
営業所にもどった私を、たくさんの先輩社員の方が褒めてくれました。
その後、アルバイトはやめてしまったのですが、さおだけ屋さんの車をみるたびに、押すな押すなの人だかりができた日のことを思い出します。