見ず知らずのおじさんとタンスを担いだ話

 

引越しといえば、わたしがまだ20代で一人暮らしをしていた頃の話。

当時住んでいたのは4階建てのワンルームマンションで、わたしの部屋は2階でした。

ワンフロア2-3部屋の小さなマンションです。

 

ある日、外出先から疲れて帰ってきて、鍵をあけて部屋に入ろうとしたら、突然おっちゃんに声をかけられたんです。ちょっとガテン系っぽい人でした。

 

「お兄さん、今ちょっと時間ある?」

「え?」

いぶかしむ私に彼は続けます。「3階に住んでるんだけど、たんすを運ぶのを手伝ってくれないかな?」

 

内心「えーマジか?」と思いつつ、人の頼みを断れないわたし。

あー、いいですよと言って二人で1階へ向かいました。

 

そこには、まあまあ普通のたんすがおいてあって、どうやってここまで持ってきたかなど、事情はよく憶えてないのですが、とにかくこれを3階まで運ばなくてはならないのです。

 

ちなみに当時住んでたマンション、エレベーターなんてありません。階段です。

 

見ず知らずのおっさんと二人、階段では声を掛け合いながら、一生懸命たんすを運びましたよ。汗だくで。

 

けっこうな重労働でした。

 

さすがに悪いと思ったのか、

 

「煙草すう人? あとで2箱、部屋にもっていくから。マルボロでいい?」

などと嬉しいことを言ってくれたんです。

 

なかなか気が利くじゃないか。

 

とはいえ、社交辞令でいったんは遠慮しました。

 

でも「ほんの気持ちだから、いいから」としつこく食い下がるので、そこまでおっしゃるならと、自分の部屋に戻って、おっちゃんが煙草持ってきてくれるのをそわそわしながら待ってたんです。

 

 

・・・ぜんぜん来ない。

 

 

待てども待てども来やしない。

 

完全にやられました。だからお礼はいいって言ったのに!

 

玄関をあけて「わざわざありがとうございます」っていう口調やちょっと無愛想な表情までシミュレーションして待ってたのに。

 

あほでした。

 

以上、引越し?にまつわる懐かしい思い出でした。

 

今週のお題「引っ越し」